「町でいちばん賢い猫」 リタ・メイ・ブラウン&スキーニー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫

>人間はよく、夜行性の動物を悪魔と結びつけた。彼らはとりわけ蝙蝠を恐れたが、ミセス・マーフィにいわせればバカげたことだった。人間は生命の鎖というものをよく理解していない。動物を殺すことが、ひいては自分たちを苦しめるということを知らないから、蝙蝠やコヨーテやキツネといった夜の狩人を殺しているのだ。

猫や犬が探偵したりご主人を助ける推理小説で、ミセス・マーフィは猫の主人公です。小説自体はあまり私の好みではなかったのですが、なかなかいいことをいってるなあと感心。

こんな文章もありました。

>二階の部屋に明かりがともった瞬間、ピュータが目にしたのは、窓辺の木立を矢のように行きかうおいしそうな蝙蝠だった。

ピュータは食いしん坊のデブ猫です。ちなみにこの本は、タイトルにひかれて買いました。推理小説ならディック・フランシスが好き。

「カモメに飛ぶことを教えた猫」 ルイス・セプルベダ 白水社
現代のおとぎ話です。話の発端がなんとも言えず現代的。

石油タンカーが海水でタンクを洗うので、海に原油が流れ出します。その原油にやられて瀕死のカモメが、黒猫ゾルバが日光浴しているベランダに落ちてきます。カモメは死ぬ前にゾルバに三つの願いを託します。「わたしはこれから卵を産むけど、それは決して食べないで。そしてその卵のめんどうを見て、卵をかえして。そしてひなが大きくなったら、飛ぶことを教えてやって。」最後の力を振り絞って卵を一つ産んだカモメは息絶えます。
猫にとってはなかなかユーモラスな状況なのですが、ゾルバは約束した通り、カモメの卵を抱き、ひな鳥がかえるとネズミや野良猫から守ってやります。しかし飛ぶことを教えるのは、うまくいかず、カモメの子も自信を失っていきます。ゾルバは、人間としゃべってはいけないという猫の掟を破って詩人の助けを借り、ついに夜空にカモメの子をはばたかせます。夜空を飛ぶカモメの子を見つめるゾルバの透き通った黄色に涙があふれるのがラストシーンです。

「飛ぶことができるのは、心の底からそうしたいと願った者が、全力で挑戦したときだけ。」というのが、ちょっと教訓的だけど、なかなかユーモラスでほのぼのするストーリーでした。ゾルバは飼い猫で、ご主人一家はバカンス中なので、一日一回トイレや餌の世話をしに人が来るようですが、カモメの子を隠すようす
も楽しい。

「くぬぎの木いっぽん」 近藤薫美子 ブックローン出版
くぬぎの木が切り倒されてしまうというニュースが、木を住みか・採餌場・休息場としている虫や鳥やコウモリやリスの間をかけめぐります。うろたえる動物たちの様子が、ちょっと漫画チックなイラストで描かれています。そしてラストのページでどんぐりが好きなシギゾウムシ(ともう一匹、何の虫かわからないやつは「リスさんこのどんぐり、どこかに埋めてきてね」と託すのだけど、そのドングリには穴があけてあるんだけど、あれでちゃんと発芽するんだろうか

同じ著者の絵本に「ゆめすいこうもり 近藤薫美子 ひさかたチャイルド」というのがあります。夜他の動物の夢を吸っているうちに夢見る力まで吸ってしまって、どの動物も夢を見てくれなくなって困ってしまうという、これもなかなか楽しい話ですが、主人公コウモリはホラキュラという名前だしちょっと発想が吸血コウモリから来ているようで今ひとつだと思ってました。



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