3 カラス対オオコウモリ
 翌日1月2日も昼間は一日自転車でバ−ドウオッチングしたりして過ごした。宿の周囲は赤瓦と石垣の、南国らしいおもむきの家々が並んでいる。ペ−浜という砂浜まで歩いて行くと、泳いでいる人が一人いたが、ちょっと寒いのではないだろうか。いくら沖縄でも水はまだ冷たかった。浜辺にはハングルや中国語で上海市などと書かれた空きビンが流れついている。インターナショナルなゴミである。
 夕方宿の近くでカラスがねぐらに帰っていくのを観察した。6時20分頃いったん集合してから何班かに分かれてねぐらへ飛んでいく。最後は6時23分であった。その後、6時25分にはオオコウモリが一頭登場。ちなみに、日没時間は6時10分。
 今夜は夕食に幻の島の泡盛「泡波」が宿のご主人の好意で出た。下戸のわれわれには関係ないが・・・。
 オオコウモリとカラスの力関係はどうなっているのだろう。両者が生息する鹿児島の口永良部島では、カラスがねぐらに帰った後の夕暮れ時からオオコウモリは登場し、明るくなってカラスがたくさん飛び交うような時間にはオオコウモリはもういない。ここ波照間島でもとりあえず夕方は入れ替わりであった。好奇心が強く人にまでちょっかいをだしてよく新聞種にもなるカラスのことだから、木にぶら下がって昼間寝ているこの不思議な生き物に手を出すのではないか、だからオオコウモリはカラスが苦手で避けているにちがいない、生態学の方ですみわけや食いわけという言葉があるが、時間を使いわけているのではないかと思い込んでいたのだが、はからずもここ波照間島で翌朝、夜遊びの過ぎたオオコウモリとカラスの遭遇を見る機会に恵まれた。
 1月3日である。朝ちょっと早起きをして6時すぎから探索に出た。まだ暗い中を、宿の目の前にある波照間農村集落センタ−の前のガジュマルのよく実った木で7頭ほどのオオコウモリが飛び交っている。交尾のような行動をするものも見られる。日の出時刻の7時半近くなって、曇り空ではあるがやや明るくなってきた。カラスがねぐらから三々五々飛んできてオオコウモリのいる木にとまったのだ。それも1羽や2羽ではなく10羽近くも。カラスとオオコウモリを同時に同じ木で見ることは絶対ないだろう思っていたから、あっけにとられてしまった。そして、すぐにこれからおこるであろうカラスのオオコウモリいじめが、心配になってきた。ところが、カラスが近付きすぎて気に障ったのか突然オオコウモリの方が前足でちょっかいをだした。カラスは羽をバタバタさせて逃げた。予想に反してオオコウモリの方が強気でカラスが近付き過ぎると前足で攻撃するような動作をし、カラスのほうがびくっとして逃げている。ただしオオコウモリどうし、カラスどうしの喧嘩の方がずっと多い。どちらも喧しい集団である。その間もちっとも朝帰りしそうにないオオコウモリはさかんにガジュマルの実を食べている。実を4つほど一度に口にいれくちゃくちゃくちゃと、数えてみたら一度は123回、もう一回は159回かんだ後にペッと吐きだしている。8時少し前からカラスも他へ行ってしまい、オオコウモリも寝ているものもでてきて静かになってきた。こんな明るくなってからオオコウモリをじっくり観察するのは始めてだ。やはり夜サ−チライトの明りの中だけで見ているより細かい所までよく見える。フンも尿も顔にかからないように前足だけでぶら下がってバンザイをするような格好でするのだが、フンは真下にぽたんと落下するけれど、尿は放物線を描いて飛んでいくこともわかった。ぽつぽつと雨も降ってきた。その間メジロやヒヨドリやシロガシラも来てガジュマル・レストランは賑やかである。
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