至福の時
19時10分、山の向こうに日が沈み、薄暗くなってきた。下界のオオコウモリは、ますます騒ぎが大きくなり、今では絶え間なく声が聞こえる。しかしなかなか動きはない。
ほとんど真っ暗になった19時40分、われわれの待っている灯台の足元の崖から、オオコウモリが二頭飛び出し、海面低く飛んで、向こうのランカウイ島に向かう。
すぐにあちらからもこちらからも、オオコウモリが飛び出す。島のピークで待っているので、足元からオオコウモリがわき上がってくるようだ。大きめだからジャワオオコウモリだろうか。みんな海面低く飛んでいく。中には上昇気流に乗ったのかすぐそばを通っていくものもいる。
一方島の反対側からも、空高く流れるように次々オオコウモリが飛び出してくる。こちらはちょっと小さいような気がするがヒメオオコウモリだろうか。
ジャワオオコウモリ500頭、ヒメオオコウモリ5000頭ほどが、たっぷり20分間かけて飛び出した。
空いっぱいに飛び立つオオコウモリはオーストラリアでもアメリカンサモアでも見たけど、ここではコロニーの上に座っているので、回り中をコウモリの群に囲まれて幸せ。あいにく真っ暗なので写真は一枚もないけど、至福の時だった。
20時過ぎると、たまに遅刻したのか一頭か二頭が飛ぶのみとなり、静かになった。
真っ暗な海をタンジュンルーの桟橋に戻る。海に手を入れると、ヤコウチュウが青く光る。
桟橋をパトカーが見回りに来た。津波の警戒をしているのだろうか。このあと尾島さんとクアの町に食事に行ったときもパトカーがサイレンを鳴らして走っていった。ペナンの方ではかなりの騒ぎになったそうだが、もちろん津波など来ない。
23時頃宿に戻る途中の道沿いのカポックの木でオオコウモリが数頭騒ぐ声がした。ダンギリ島のオオコウモリはみなランカウイにむかっていたが、この島のあちこちに分散してしまったのだろうか。