世界各地の民話

フィリピンの民話(1997)編者マリア・D・コロネル 訳者竹内一郎 青土社

コウモリの始まり
ネコがコメクイドリを捕まえて翼だけ食べ残して、捕まえたネズミの上にほおり投げてでかけたら、死んだふりをしていたネズミは翼から流れ出た血が固まってくっついて逃げようとしたら飛べるようになっていた。「おれはコメクイドリなんだ」とメスのコメクイドリに結婚を申し込んだが「毛深いから」と断られた。別のコメクイドリには「不細工ねけ」と笑われた。鼠たちの所に戻ると「あんなに自慢して、自分から離れていったくせに!」といって追い返されて、ばつが悪くて夜だけ飛び回るようになった。



ビルマのむかしばなし(1999)新読書社 

どうしてコウモリは税金を払わずに済んだの。

王様はこの国に住むすべての者から税金を取り立てることにし、動物の種類ごとに日にちを変えて税金を取るように家来に命じた。

コウモリの家に役人きたときに「今日は鳥が税金を払う日ですよね。わたしたちは鳥ではありませんからね」役人はコウモリを調べて「おまえたちはとりじゃないネズミだ」
ネズミが税金を納める日になって役人が来たら「わたしたちはネズミじゃありませんよ!わたしたちが空を飛んでるのを見たことがあるでしょう?」「おまえたちはわたしに、自分たちは鳥ではないから、ネズミの番が来たら払うといったではないか」と役人が言うと、「それを言ったのはあなたですよ!」「もしおまえたちが払わないのなら、そのことを王様に報告しなければならないのだぞ」と役人は脅した。「そのことを、最初にここへ来たときに王様に報告すべきでした。そしてわたしたちが羽を広げて飛ぶことができるのを確認するまで調べた方がよかったんじゃないですか。しかし今となってはその時に税金を集められなかったことを報告すれば、王様はあなたがまじめに仕事をしなかったと思うでしょう。」役人はコウモリを説得できずにひきあげ、コウモリをそっとしておくことにしました。コウモリは税金を払うことはありませんでした。


のうさぎとさいちょう ウガンダ、アチョリ人の民話 オコト・ピテック著 北村美都穂訳 新評論

のうさぎとこうもり

のうさぎとこうもりは大の仲良しだった。ある日こうもりがのうさぎに「明日ぼくのうちにおいで。髪の毛をよくしてあげるから」というので行ってみるとこうもりは木のてっぺんにぐあいのいい台を作って座っていて、「ここに上がっておいで」という。台の上でコウモリはのうさぎの髪の毛を編んでいるところへこうもりのお母さんが「おかゆができたよ」と声をかけた。「ここに投げ上げてちょうだい」とこうもりがいうので煮えかえっているおかゆの入った二つ割りひょうたんを投げ上げた。こうもりはひょうたんを空中で受けとめて台まで持ってきて二人はおかゆを食べて、こうもりはのうさぎの髪の毛を編み上げた。

のうさぎが「こうもりくん。明日ぼくのうちにおいで。髪の毛をよくしてあげるから」というのでこうもりがいくと、のうさぎは家のまわりで一番高い木によじ登って台を作った。そこでのうさぎがこうもりの髪の毛を編みにかかると、のうさぎのお母さんが「おかゆができたよ」と声をかけた。「ここに投げ上げてちょうだい」とのうさぎがいうと煮えかえっているおかゆの入った二つ割りひょうたんを投げ上げた。のうさぎは空中で受けとめようと期から跳び下り、頭を煮えかえっているおかゆの中に突っ込み、地面にぶつかって頚(くび)を折って死んだ。


When Bat was a Bird(and other Animal Tales from Africa)
Nick Greaves著David du Plessis絵
アフリカ南部の民話


初めはコウモリのLulwaneは鳥の仲間だった。アフリカの太陽に照らされて金属光沢の輝きを持つカラフルな羽根がてたたえられていた。でも同時にLulwaneは欲張りで自分勝手で嫌われていた。
Lulwaneは餌が足りない時に自分の採餌場を他の物が使うのを許さなかった。彼はわざと木のねぐらを最初の光が照らすよりもずっと前、みながまだ眠っているうちに出発しどっちに向かったか知られないようにしていた。
 そして大干魃となった。
 乾燥した大地には何ヶ月も雨が降らず、堅い実やブッシュのフルーツは芽を出さなかった。水たまりも窪地に流れる水もまったくなくなり、容赦の無い太陽が休み無く照りつけからからになってきた。
 飢餓の恐れが大地中に広がり、皆が痩せて窶れているのに、Lulwaneはつやつやして太ったままだった。やがて皆はLulwaneがあまりにも欲張りで自分勝手なので追い出した。
 Lulwaneは洞窟を見つけ、家と隠れ家として使った。それどころか彼は更に秘密に行動するようになった。毎晩毎晩餌探しの略奪は早くなって速やかに目的地に向かっていきどこにも寄り道をせず昔の友達とも会わなかった。より長く暗い時間に飛ぶようになり、だんだん視力はフクロウのように鋭くなり夜でも見えるようになった。昼間はLulwaneは洞窟の一番くらい奥まったところに隠れて敏感な芽を太陽が傷めないようにした。昼間はずっと寝て過ごした。
 しかし食べられるだけ食べても水を見つけることはできなかったので、水なしで食べるってなんぞや。夜は小さな水滴が落ちてきたが、葉っぱから落ちて枯れた大地にしみこむ前に集めるのは難しかった。動物も鳥も、食料の足りているLulwaneも悲惨な状況だった。
 しかし動物人間たちの中でより頭のいい部族がいた。Gundwaneという部族すなわちネズミだ。ネズミも機敏な手を持っていた(器用な手先?)。彼等は一所懸命働くのがいやじゃなかったし、喉の渇きに突き動かされていた。そこでネズミ人間達は協力して枯れた川底に滑らかな丸いへこみをつくった。彼等は小さな手でくぼみの形を叩いて作り、岩のように堅く干上がってないもっと大きな水たまりから粘土を持ってきて裏打ちした。そうして彼等は毎晩したたる命の糧の露がしみこまずにへこみに集められるようになり、水たまりをつくった。毎日夜明けに輝く透明な液体が、みんなの喉の渇きを癒やすに十分な量溜まっていた。ブッシュの動物はみんなGundwaneをたたえた。
 そこでLulwaneは喉の渇きをいやすために毎晩露の水たまりにやってきて、暗闇で呑み夜行性のGundwaneと水をわけあった。時間がたつにつれ、彼は外見も越えもよりネズミっぽくなって、水辺で溶け込むようになった。
 Lulwaneは、自分の種族を永遠に去ってネズミになろうと思った。鳥にはブッシュの動物皆が喉の渇きをいやすような水を提供できない。Gundwaneの方が頭がいいのは明らかだ。
 しかしいくつかの点で身についた習慣は残る物だ。新たな日が来る度にGundwaneは大地にある自分たちの巣穴に戻って昼間は寝ていたが、Lulwaneはそうできなかった。なぜなら彼は大地の穴について何も知らなかったからだ。なので、最初の光りが地平線に登ると自分の洞窟に常に戻った。岩だらけの隠れ家には腰をかけるところがなかったのでぶら下がって逆になって寝た。今でもそうしている。
 時がたち、コウモリのLulwaneの鮮やかな羽色はなくなった。太陽で羽根が輝く事はなくなった。光りにあたらないので色あせて輝きを失った。かわりに暗い洞窟の寒さから身を守る灰色の暖かい毛が生えてきた。翼は水かき状の皮膚になり、くちばしは消滅して今日のコウモリの鼻面になった。
 しかしそれでもLulwaneは、Sedhulu(honeyguideという鳥)のようにとても敏捷に速く飛べる。だからコウモリのLulwaneがかつては鳥だったというのを否定できない。

解説:もっとも口論好きな動物Peters' Epauletted Fruit Bat
南アフリカにはオオコウモリの仲間が8種類いる。一番普通種がピーターケンショウコウモリだ。木々に数百頭を越える大きなコロニーをつくりぶらさがり、翼で体を包む。コロニーはとてもうるさい。実際に動物界でよりよいねぐらの場所を争って、守ろうとするおしゃべるなフルーツバットほどうるさい動物はいない。
その名の通り、圧倒的に果実食である。花もつぼみも花蜜も食べるけれど。無駄の多い食事をしてフィーディングポストの下には、皮や種や噛んだ繊維が散らばっていて、ジュースを絞って果実の果肉を捨てたような状態だ。イチジクが大好物だ。
 フルーツバットはそれぞれの翼に2つ爪があり、とんがった犬のような鼻面をしていて、毛の色はさまざまだが多くは茶色がかったバフ色だ。大きなオスは肩に匂い腺があり、長居白い毛に覆われている。コウモリが興奮したり、脅えたとき、腺は裏返しになり、肩章が顕著になる


新装版 オーストラリア先住民 アボリジニのむかしばなし
文と絵 池田まき子 新読書社 2002年9月25日初版第一刷

第4話 コウモリとレインボー

 鳥はみんな一緒に大きな湖の近くのキャンプに住んでいた頃、体が太った蛇のようで七つの美しい色をしたレインボーもそこでアヒルといっしょにくらしていました。アヒルは元々コウモリのお嫁さんでしたがレインボーにうばわれてしまったのです。レインボーは怠けものでした。コウモリは踊りが上手なことで知られていましたが、いつも一人で小高い丘のほら穴にすんでいて、いつかアヒルを取り戻そうと考えていました。武器として槍の先につけるライムストーンをするどくけずって自分の鼻や顔をためしに切ってみました。大きな角がするどいライムストーンで試し切りをして鼻をそぎ落とし顔まで切ってしまい、今のようにおかげでコウモリは鼻が低く平べったい顔になってしまいましたが、見事な槍が完成しました。

ある日コロボリー(歌や踊りをする儀式)が開かれ、レインボーとアヒルもやってきました。コウモリも踊りで参加しました。みんながつかれ果てて眠ってしまった時に、コウモリは槍でレインボーの体を刺しました。レインボーは転げ回りながら近くの湖に落ちてそれっきり上がってきませんでした。アヒルはコウモリの元に戻りずっと幸せに暮らしました。

レインボーは今もその湖にいて、雨が降ったあとに湖から出てきて空いっぱいに七色の体を大きく伸ばします。レインボーは反省して、虹の姿になってみんなの目を楽しませることにしたのです。

第12話 コウモリはなぜ逆さまにぶらさがるの?
この世界が始まってまもなく、神様バイアミーは鳥を集めてさまざまなことを教えてました。オオコウモリの子供が「ぼくも入りたい」とやってきたけれど、バイアミーは「おまえは鳥じゃない」といいました。でもオオコウモリの子供は「ぼくは翼があって鳥と同じ様に飛べるんだよ」とわがままをいうのでバイアミーは怒って足を持ち上げて近くの木に枝に逆さまにぶらさげくくりつけてしまいました。しばらくしてバイアミーがやってくるとオオコウモリの子供は「逆さまに見る世界ってなんてすばらしいんだろう。こんなこと、ほかの生き物じゃできるわけないものね」というのであきれたバイアミーは「これからずっと逆さまになっていればいい」と、足の先を曲げてぶらさがりやすいよにしました。いまコウモリが逆さまにぶら下がるのはこのときのわがままなオオコウモリの子供のせいだといわれています。そしてみんなが寝静まった夜の活動し昼はほら穴や木のみきの穴にすがたをかくしているのは、逆さまにぶらさがっているのをみんなにばかにされたり、笑われたりするのがいやだからだそうです。


Bats:Biology, Behavior and Folklore Glover Moriill Allen

イソップ童話2つ 地面に落ちて鳥が好きなイタチに捕まったコウモリは鳥ではなくてネズミだと言う。別の鼠が好きなイタチに捕まったときにはネズミではなくて鳥だといって放してもらう。もう一つは鳥と獣の戦争で交互に勝つが、コウモリはいつも勝った側の味方だという。平和が訪れたときに両方から非難を受けて昼間の明るい世界から追放され、暗いところに隠れて夜一人で行動する事になった。

その元になっていると思われるのはR. H. NassauのWhere animals Talk 1914 ナイジェリア南部のネグロス族 森の獣と鳥の戦いでコウモリはどちらにつこうか決めかねていた、結局信用を失って昼間は鳥をさけ、夜は動物を避けるために高いところを飛ぶ事になった。似たような話はGesner(1555)にもある。
パラレル物語は北アメリカのインディアンチェロキー族にもある。(Mooney(1900)球技で獣が鳥に挑戦する。動物チームから追い出された1匹はドラムの皮で翼をつけて(チェロキー語でコウモリ)Tlamehaとなって優秀なプレイヤーとなった。もう一匹分の翼はなかったが皮をひっぱってムササビとなった。別バージョンでは動物チームに入って勝利をもたらした。

カリフォルニアのPomoインディアンの神話では、Barret(1933)でコウモリは目が小さくて視力が悪いので火を近くで見ても大丈夫ということで
もうひとつコウモリが黒曜石を口に入れ感で吐き出すと矢尻になったという。たぶんこれはカリフォルニア南部に生息するOtopterus californicus(Macrotus californicus)カリフォルニアオオミニナガヘラコウモリで鼻葉が矢尻を連想させるからだろう。(p.6)

ウリッセ・アルドロヴァンディ(Ulisse Aldrovandi、1522年9月11日 – 1605年5月4日)はイタリアの博物学者によるラテン起源の民話で、昔からコウモリとコウモリの間には敵意があったと。古代ローマのアイリアノスによればコウモリはコウノトリの卵に触るだけで不毛にさせることができたという。なのでコウノトリは巣に葉をかけるという。
コウモリはコウノトリだけでなくアリやイナゴも憎んでいた。毒のあるアリに指されたときにはコウモリの心臓が効くという。(p.7)
ヨーロッパでは古くから、コウモリは脂肪が好きでハムやべーコンを囓るという。昔は煙突に吊して、空気の通りのいい部屋に保存されていたものだ。たぶん犯人はネズミだけれど、昼間寝ていたコウモリのせいにされたのだろう。(p7-9)

フランスのMayenneのいいつたえでコウモリは頭にしらみを写そうとして近づいてくるというのと女性の髪飾りに絡みつくのは、その人が1年以内に死ぬあるいは破滅的な浮気の前兆だという。(P9)

 昔はコウモリの翼はアリと共に夜家をあける男性の象徴だった。、ギリシア・ローマ時代、コウモリは夜活動する人の事をいった。(P9)

エジプト人は弱く同時に軽率な勇敢な男を蝙蝠の姿で表現した。なぜなら小さくて羽毛はないけれど飛べるからだ。ソクラテス派の哲学者Chaerephon(オヒキコウモリの仲間でもある)は、蝙蝠と呼ばれた。昼間哲学者とともに活躍するだけでなく隠れて思索しているからだ。(p10)


世界のコウモリ神話と民話2019年10月31日 by zteve t evansより
https://folklorethursday.com/folktales/bats-in-mythology-and-folklore-around-the-world/

吸血コウモリ(Desmodus rotundus), Uwe Schmidt, CC 4.0
コウモリはなぜ夜飛ぶのか

ナイジェリア南部の民話は、コウモリが夜に飛ぶ理由を斬新に説明すると同時に、その信用できない性質を浮き彫りにしている。オヨットという名のブッシュラットがコウモリのエミオングと仲良しで、よく一緒に食事をし、交代で料理をしたそうだ。

ある日、エミオンはオヨットの大好きなおいしいスープを作り、オヨットはエミオンのスープを食べた後、どうしたらそんなにおいしくできるのかと尋ねた。するとコウモリは、自分の肉はとても甘いので、スープを作るときはいつも自分の体をお湯で茹でているのだと教えてくれた。その方法を実演してみせた。まず、大きな鍋にお湯を張り、友人に「沸騰している」と告げました。そして、その中に飛び込んでしばらく座った後、外に出てきました。オヨットの前に置かれたスープは、美味しかったが、それはコウモリが早めに用意した別のスープのものだった。

オヨトが家に帰ると、妻は用事で出かけていた。オヨは、妻が帰ってきたら、エミョンに教わったようにおいしいスープを作ると告げました。オヨはお湯を沸かして飛び込んだが、スープが沸騰していたため死んでしまった。妻が帰ってくると、鍋はまだ煮立っていて、夫の姿はない。そこで、妻はスープをかき混ぜようと身をかがめたが、スープに髪の毛が混じっているのを見たという昔話とは違い、夫の死体が見えたのである。夫の死とスープが台無しになったことに憤慨した彼女は、王のもとへ直行しました。

王はエミオンを逮捕し、牢屋に入れるように命じた。エミオンは自分がトラブルに巻き込まれたことを知り、茂みの中に飛び込んでいきました。一日中、人々が彼を探し、彼は自分のやり方を変えない限り、遅かれ早かれ捕まることを悟ったのです。そこで、昼間に出てきて餌を食べるのではなく、夜になってから餌を食べるようになりました。そのため、コウモリのエミオノグが昼間に出てくることはほとんどなくなった。

不幸な鳥
インドのカナラ地方に伝わる民話では、コウモリはかつて不幸な鳥で、人間になることを祈っていた。その願いは一部叶えられ、グロテスクな人型の顔、髪、歯が与えられたが、翼はあり、飛ぶことができた。しかし、翼を持ち、空を飛ぶことができる。そのため、彼らは夜だけ出没し、昼間は鳥に戻ることを祈って過ごすのである。

コウモリを使った治療
古代エジプトでは、コウモリは禿げや熱病、歯痛、視力低下など多くの病気を軽減したり治すことができると信じられていた。コウモリの糞をドアの開口部に置くと、病気を運ぶ悪魔が侵入するのを防ぐことができた。中国では、コウモリは幸福と幸運の象徴とされ、その姿は美術品や工芸品に描かれている。

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