ネイティブアメリカンの民話

北米ネイティブアメリカンのオジブワ族の伝説
ある朝父なる太陽が空を昇ろうとして木の枝にひっかかった。次の日父なる太陽が顔を出さないので、動物たちは森を探し回った。一匹のリスが木の上から木の上へと走ってまわって父なる太陽を見つけた。

リスは父なる太陽に走り寄ったが熱で尻尾が焼け落ち、毛皮は真っ黒に焦げ、目はほとんど見えなくなった。それでもリスはもう一度父なる太陽を助けようとした。リスは一生懸命押したので父なる太陽は、ひっかかっていたのが外れた。父なる太陽は自分を助けようとして小さなリスが焼けてしまったのを気の毒に思った。

「おまえが一番望むことは何だ」と父なる太陽は、リスに尋ねた。リスの答えは「いつも空を飛べたらいいなと思っていました。」

父なる太陽はリスの願いを叶えてやりました。小さなリスは最初のコウモリとなりました。

Backyard Animals Bats Annalise Bekkering Weigl Publishers Inc. p21

北アメリカのインディアンチェロキー族
球技で獣が鳥に挑戦するときに、ネズミくらいの大きさの獣二匹が小さすぎると言うことで獣チームから追い出されたので、太鼓の皮から制作した翼をもらって、一匹はコウモリに、一匹はムササビになって鳥チームで闘い、チームに勝利をもたらした。同じ獣と鳥が闘う話でもイソップ童話の獣と鳥の戦争より、こちらの方が筆者のお気に入りである。ラクロスのような競技らしいが、空を大部分の鳥よりも器用に方向転換して俊敏に飛べ、鳥と違って前足もある程度使えるコウモリとムササビは最強の競技者である。

こうもりに変身したねずみ

昔とても年寄りのねずみがいてもう働けなかった。「暗闇の中で自分は目が見えて、ほかのものからは見られたくない。こうもりは熟したバナナを食べるんだ。こうもりになろう。」とこうもりに変身してしゃっくりをした。

ほんもののこうもりがねずみがしゃっくりしているのを聞いてやってきて「おれを笑い物にしようって気かい?」「そんな気はないよ。こうもりになりたいんだもの」そう返事をするとしっぽが取れ皮膚がのびて翼になった。

こうもりは仲間に「あそこにこうもりに変身中のねずみがいるんだよ」こうもりたちがみんな見に来た。

ねずみが「飛びたいんだけどこわいんだ」というので「おまえの両の腕であおぎにあおぐんだ。そうしたら飛べるよ。」ねずみはそうしているうちに慣れてきた。飛ぶのが平気になって飛び去った。(インディアン)

メルヒェン12ヶ月(1月篇)編者L.テッツナー 訳者飯豊道男
未來社

同じ話が
コウモリになったネズミ <カシナウア族>
ブラジル アメリカインディアン
クマ男―アメリカインディアンのはなし (1982年) (世界のメルヒェン図書館〈10〉) - 1982/1/ 編訳者 小澤俊夫 ぎょうせい

吸血コウモリのはじまり

アグアルナ族がまつりの日にマサト酒をのんでいた。夜になるとどこからかうつくしくきかざった男がやってきて酒もりにくわわりました。実はこの男はアエツァサ(アグアルナ族とは別の部族)でした。やがてアグアルナ族たちはよっぱらってつぎつぎにねむってしまいました。翌日アグアルナ族のひとりが、首をきりおとされて死んでいるのが見つかりました。その首はどこかへもちさられていました。

つぎのまつりの日、またアエツァサがやってきてアグアルナ族たちといっしょに酒をのみはじめました。とちゅうでひとりのアグアルナ族がそこへでていくとアエツァサもあとをおっていきました。よく日またそのアグアルナ族の首なし死体が見つかりました。

まつりのたびごとにこのようなことがおこりました。ふたりのアグアルナ族が犯人をさがしにくことになりましたが、でかけたきりふたたび村にもどってはきませんでした。べつのアグアルナ族たちがでかけましたがやっぱりもどってはきませんでした。

そしてまつりの日がきました。またアエツァサがやってきてくわわりました。アグアルナ族たちはだれが犯人か見はるためにあまり酒を飲まないように注意しあいました。夜があけるとひとりのアグアルナ族がそとへでていきました。アエツァサはそとにでて、そのアグアルナ族の首をきりこわきにかかえるとにげだしました。「あいつが犯人だ!」ひそかにアエツァサを見はっていたアグアルナ族がさけびました。ふたりのアグアルナ族がおいかけてもちさった首からしたたる血をたどってアエツァサのすみかにたどりつくと、入口に大きな木があり、アエツァサがこれまでとってきた首がずらりとかけてありました。「おまえは村にかけもどり一をあつめてきてくれ。おれはここにいてあの家のようすをみはっているから。」
首をとってきたアエツァサはごきげんでひと晩じゅうのみあかし、夜明けごろよぱらってねむりこむのをまっていたアグアルナ族たちがころしてしまいました。家の中にアエツァサの血がたくさんながれでて、うたいだしました。その歌の通りに、アグアルナ族たちが木切れを一本、木の実をひとつ、黒い小さなたねをふたつ、ミズガヤ、葉っぱを血の中になげこむと、コウモリが1ぴきウマレマイタ。木ぎれが骨、木の実が頭、黒いふたつのたねが目になり、ミズガヤが歯、葉っぱがつばさになったのです。アグアルナ族たちはおもしろがって血の中にどんどんなげこむと、ついに血はぜんぶコウモリにかわり、谷のおくにほうにとびさっていきました。
それからというもの、コウモリは夜になるとアグアルナ族の村へやってきてつぎつぎにアグアルナ族にかみつき、血をすうようになりました。こうして吸血コウモリが産まれたということです。

世界のむかし話⑥ペルー・ボリビアのむかし話ーインカにつたわる話
編著者 加藤隆浩 偕成社

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