11 通り過ぎていったのは・・・

magpie robinはすぐそばで見られる いきなり出てきたのがセーシェルシキチョウという白黒のツグミ。この鳥は1990年にはFregate Islandに棲む23羽だけにまで減少してしまったのだが、他の4つの島に移して個体数回復計画をすすめ、現在は90羽にまで回復した。クーザン島にいるのはそのうちの25羽で、他の島では餌を与えているが、この島は自然の食料が豊富なのでやっていないという。

 切り株ではシラオネッタイチョウが営巣している歩道脇の木の根元に、白い鳥が座り込んでいる。シラオネッタイチョウが繁殖しているのだ。よく見ると道のあちこちに古い椰子の切り株があり、中央部が腐って穴状になっているが、ほとんどの切り株の中にシラオネッタイチョウが座り込んでいる。この島では3000つがいほどが繁殖していて、一年中が繁殖期だという。

 すぐ脇からシロアジサシが飛び立った。道から1m足らずのところにある、掌ほどの枝のくぼみに、ふわふわとして丸っこいシロアジサシの子どもが、つぶらな瞳をしてちょこんと止まっている。よく落っこちないなと思うほど狭いスペースである。


 雨が小降りになってきた。コースは熱帯雨林の中を通る幅1メートルちょっとの小径である。足もとにはグアノでできた石が散らばっている。

 向こうから白いものがやってきた。側を通ったとき、ふわりと風を感じたような気がした。長い尾を引いて飛ぶシラオネッタイチョウと、50センチほどの距離ですれ違ったのである。肩の高さくらいであったろうか。目の前に座って繁殖している個体もたくさんいるのだが、やはり飛んでいる姿は優雅で、夢を見ているようだった。

 真昼の夢に出会えるクーザン島は、世界中のバードウォッチャーにお薦めです。

 あなたも一度はどうぞ。


推定年齢100歳の陸ガメ 森の中の少々開けたところに、甲羅の長さ1mほどにもなる巨大な亀 Aldabra giant tortoiseがいた。乱獲により一度絶滅したのを再移入したものだ。100歳以上だというこの個体は、草を食べながらゆっくりゆっくりと歩いていく。ガイドの説明によれば、この亀は浮かぶことはできるけど泳げないから、完全な陸生である。ただ夜は蚊がうるさいので海岸に涼みに行くことも多いという。このゾウのような固そうな皮膚を蚊が刺すのだろうか。雄と雌の見分け方を習う。甲羅の形が違うのと、雌はずっと小さいので交尾の時は雄の体に隠れてしまって見えないほどだという。

 この島は別のウミガメの産卵地でもある。砂浜にはウミガメが産卵した後がある。産卵期の真っ最中なのだ。約6週間で卵は孵化して稚ガメが出てくるのだが、これを狙うカニも生息していて、稚ガメが出てきて海に向かうのを待ちかまえているという。

 スタートは10時55分、再びもとの所に帰り着いたのは12時30分であった。「雨が降っていて満足してもらえたかどうかわからないけれど・・・」とガイドはいっていたけど、十分満足。晴れた日に写真を撮りたいのはやまやまだけど、側を通り抜けていったシラオネッタイチョウの姿は、くっきり目に残っているから。

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