子連れでドボーン ニューサウスウェールズ旅行記 10

 直ぐ目の前の木にとまってお腹を舐めているオオコウモリがいる。水に飛び込むのは、別に水泳をするためではなく、濡れたお腹を舐めて水分を補給するためなのである。ニューサウスウェールズ州の夏は暑く乾燥している。鳥や獣のように川岸に歩いていけないオオコウモリの工夫なのだ。

 ちなみに今は繁殖期で子連れで飛んでいる個体が多いのだが、赤ちゃんを抱いたまま飛び込むのかと聞いてみた。子どもたちは10月に生まれるので今では母親が夕方の採餌に行くときはコロニーにおいているが、もっと小さかった頃は赤ちゃんをお腹にくっつけたまま飛び込むので、赤ちゃんも濡れることだろう。ただ、乳首がわりと上の方にあるので、そんなにびしょぬれにはならないだろうともいう。Vivienさんは保護飼育中の子どものオオコウモリを連れてきていて、乳首を見せてくれる。たしかに随分脇の上の方にある。しかしあの水しぶきが上がる勢いから判断すると、赤ちゃんコウモリはかなりの衝撃を受けそうだが。

vivienさんちのベランダ 夜8時半、暗くて見づらくなってきた。Vivienさんのお宅にお邪魔をする。車で直ぐそこである。

 テラスには、先ほどの子も含めて、子どものオオコウモリが3頭いる。親が飛んでいるときに落っこちたのかある家の屋根に落ちてきたという1頭と、親が帰ってこなくてキャンプに置き去りになっていた孤児2頭である。餌はベビーフード(人間の)と牛乳。

 このあたりにはオオコウモリの面倒を見ている人が他にも何人かいて、もう一ヶ月もしたら、Vivienさんちの裏庭のケージに30頭ほどが集まって社会復帰の訓練に入るという。オオコウモリは生後4ヶ月頃親から離れるが、この時期に自然界に放すと、うまく独立できるという。放す時期を誤ると、大人になっても人に慣れて、外に放しても人を慕ってやってくるので、襲われると誤解した人に殺されてしまうことがあるという。オオコウモリという生き物を知らない人が翼開長1m近い翼を広げて向かってきたら、ホラー映画を連想するのかもしれない。

 

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