サモア的生活

 伝統的なサモアの家は、ファーレと呼ばれる。サンゴを積んだ床に木の柱と椰子やアダンで葺いた屋根だけからなり、壁がないのでまったくの素通しである。当然中はすべて丸見え、プライバシーはない。もともと集落は近親者が集まって住んでいるので、お互いにすべてを知った間柄なのだろう。ツツリア島の端の方の山中を走っているときに、木々に隠れるようにしてこういった伝統的なファレをいくつか見た。

右の画像は伝統的なファーレ。ただし住居ではなく集うためのもの。

 現在は舗装道路沿いにあるほとんどの集落では、屋根は波打つトタンでできていて、壁には大きなガラス窓があってブラインドがかかっている。ブラインドは日除けなので夜は明けてあり、電気をつけるとどの家も丸見えなのは同じである。上の画像の左奥に見えるもの

 各集落には共用のファーレがいくつもある。これは床はコンクリートで屋根はトタンでできてはいるものの、壁のない伝統的なスタイルである。一つの集落にいくつも共用ファーレがあり、家の数に対してずいぶん多い。この共用ファーレは子供達の遊び場、大人の昼寝場所、大人の井戸端会議場となっている。アダンを編んだ筵を持参して、昼も夜もどこかのファーレに人々が集まっている。

 ずいぶんおおらかな開放的な家だなあと思っていたが、先日沖縄の田舎を歩いていて、昔ながらの漆喰で固めた赤瓦の家々を見て、「あ、同じじゃないか」と気がついた。沖縄の小さな村や離島に行くと見られる伝統的な家も、雨戸はあるけれど、留守にするときでさえ開け放してあり、庭に立てばどの部屋もほとんど丸見えである。屋根が大きくて風はよく通る。違うのは沖縄の場合は一応サンゴを積み上げた石垣かフクギの生垣があって、家の真正面には目隠しの石垣があるので、道路から完全にすべてが丸見えなわけではないというくらいか。 夜はあちこちに集まって、お酒を飲んだりあちこちドライブしたりするのが娯楽なのも似ている。暑いところに住むと必然的に家も習性もそうなるのか。

 日本では小型トラックというと、荷物を配達したり農作業をするのに使っているが、あれを一回り大きくしたようなピックアップトラックをよく見かける。荷台には人がいることが多い。
 コインランドリーに洗濯に行くときはもちろん、晴れ着を着て教会に行く時もピックアップトラックである。真っ白な一張羅が埃まみれになると思うが。
 特に用はなさそうだが荷台に乗り合わせて、集落から集落へ行き来したり、夕暮れ時に眺めのいいところに車を止めてお喋りをしたりビールを飲んだりしている人も多い。乾期とはいえ日に何回もスコールが降ることがある。当然ずぶ濡れになるのだが平気である。

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