アメリカンサモアの食べ物

 太平洋の島々に住む人のルーツはアジアと言われている。今から約5万年前、インドネシア方面から狩猟と採集の生活を営む人々が、ニューギニア島へ渡ってきた。その後、約9000年前頃には、再びインドネシア方面からの移民の波があった。この時渡ってきた人々はブタの飼育と原始的な農業を行い、石器や土器の技術も持っていた。この第二波で渡ってきた人々は、更に太平洋を南西に進み、5000年前頃にはソロモン諸島やバヌアツへ、約3500年前にはフィジーへ達した。そして2500万年前にはトンガ・ニウエ・サモアへの移住が行われた。人々は移住するときに、タロイモ・パンノキ・バナナ・ココヤシなどさまざまな食用植物を運んでいる。
 ロタやサイパンやグアムでは、町中のレストランでこれらの食物はあまり見かけず、スーパーにはアメリカ他の輸入食物があふれているが、アメリカンサモアではこういった伝統的主食が健在である。市場にはヤシの葉で編んだ籠にパンノキの実が並びパパイヤ、タロイモ、タロイモの葉、バナナ、皮をむいたココヤシ、カボチャ?、月桂樹の葉をリース状に編んだ物、冬瓜などが売られている。手作りと思われるほうきもなぜか食物と並んで売られていた。パパイヤを一つ一$で買ったら、サービスだといって傷んでいるのを更に二つつけてくれた。二人で食べるのに3つは多かった。

市場の風景 市場というと、お店がぎっしり並び、売り手と買い手がやりとりし活気にあふれた様子を普通想像する。沖縄の公設市場、日本各地の朝市、台東の市場、台北の夜市などわれわれが今まで訪れてきたところは、皆熱気あふれる市場であった。しかしここでは、市場ものんびりサモアペースである。朝から夜遅くまでいつが営業時間ということもなく、ずっと品物を並べ、お客も一度にたくさん集まることはない。売り手は座ったままおしゃべりしていることもあるし、空いている区画に横になっていることもある。
 ちなみにこの市場、夜は大ビンゴ大会と化すこともあるようだ。ここでは見なかったが、他の集落のビンゴ大会やそのポスターを目にした。ばくちのようなものだろうか。
 朝は新聞を売っているので、かろうじて活気がある。二種類の英字新聞がある。小さい子供達が道路に出て売っていることもある。
 市場の近くには地元の人々が入る食堂やテイクアウトのお店が何軒かあるが、ここでも主食は米もあるがタロイモ、バナナが見られる。おかずは肉や魚を甘辛く似たものが多い。鳥の首と思われる物を煮込んだ料理を食べた。

ココナッツクリームを使ったパンと蒸しもの こちらの料理はマリアナと違ってココナツミルクはあまり使わない。当然オオコウモリのココナッツミルク味スープなんていうものはない。ココナツクリームを入れた蒸しパン(バリと言ったように聞こえた)と、タロイモの葉にココナツクリームを包んでホイルで包んで焼いたパルサミという食べ物を、お店で見かけたのみである。タロイモの葉は、食べると口の中がひりひりしてくる。蒸してあるようだが、シュウ酸カルシウムの結晶が残っているのだろうか。

 わずか10日くらいの海外旅行でわざわざ日本食を食べる人の気がしれない、と思って今までほとんど食べたことはないのだが、今回はパゴパゴ港の目の前のお寿司やさんに入ってみた。

 アメリカンサモアのいちばん大きな産業は、マグロの缶詰工場である。港の近くにヴァン・キャンプとスター・キストという大きな缶詰工場があり、たくさんの人が働いている。そうでなくてもあちこちたむろしてお喋りするのが何よりの娯楽のサモア人だが、従業員の休憩時間に通りかかると、道路や道路を隔てた何軒かのファーストフードのお店などにどっと人があふれている。もっともアメリカンサモアの住民はアメリカの市民権を持っていてハワイやアメリカ本土に自由に移住できるので、実はここで働いているのは西サモアからの出稼ぎの人がかなり多いらしい。


 いつも人がたむろしていて道も狭くてでこぼこなので、車を止めにくい雰囲気で工場の中はのぞかなかったが、道路からちょっと中が見える場所があって、いつもベルトコンベアの上をたくさんの缶が動いている。 マグロの缶詰すなわちツナ缶は、産業らしい産業は他になく、観光客誘致もあきらめたらしいこの島の輸出の、95%を占めるという。ちなみにこの中にはキャットフードもあるらしい。うちの猫はドライフードしか食べないが、日本にも入っているのかもしれない。

マグロのお寿司 ということでここはマグロの本場なわけで、寿司もなかなかいけるかもしれないと思った。SASHIMI and RICEはマグロのサシミがたっぷりでてきた。SUSHI SPECIALというのも、イクラ+トビッコ(たぶん)とエビがひとつづつあった他は、すべたマグロのにぎり寿司である。赤身でもなくかといってトロでもなく中間くらいの身で、両方ともなかなか美味しかった。計31.9$ 韓国の人がやっているお店で、メニューは英語とハングルの両方で書いてある。日本人はほとんど来ないところなので、まずはAre you chinese?と聞かれた。ご主人は大阪で寿司の修行をしたという。サモア人らしいウェイトレスもいたが、なぜかわれわれが箸で食べている途中にフォークを持ってきた。まだ仕事になれていないらしい。
(左はSUSHI SPECIAL 右はSASHIMI and RICE)

 大マグロ工場のせいか、港周辺は常に魚臭いにおいが漂っている。港に面したわれわれのホテルはもちろん、国立公園区域である港の後ろの山々の稜線を通る唯一のハイキングコースを歩いていると、アラヴァ山の頂上(491m)でさえも魚臭いにおいが漂ってくる。 

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