運賃は距離には比例しない

 翌朝はスービックまでバスの旅。マニラ周辺は渋滞するというので、朝5時半にホテルをチェックアウトする。まだ真っ暗だ。車で10分ほどでパッサイのバスターミナルであるが、道の反対側で車を降りてから横切るのが一苦労だ。とにかく車がスピードを緩めずに途切れずに次から次へと走り、信号など見あたらない。肝を冷やしてターミナルになんとかたどり着いた。スービックの入り口の町、オロンガポまで120km3時間ほどの旅だが、142ペソ。嘘のように安い。乗客が1/3ほど乗ったところで6時ちょっと前にバスは出発する。

高速の下にはバラックが 話には聞いていたが、冷房が効きすぎて寒い。常夏のフィリピンで長袖を何枚も重ねて震える。渋滞する市街地のあちこちで乗客を拾いほとんど満席となって、1時間ほどで高速道路に入る。郊外へでると一面の水田地帯である。常夏ではあるが一応今は冬、二期作をやっていて青々と稲が育っているところと、何も植えてないところがある。ところどころに白鷺の群が降りている。高架の高速道路の下には延々と崩れ落ちそうなバラックが建ち並ぶ。

 7時40分、ファーストフードや飲み物が揃ったパーキングで15分止まる。

 このあとはあちこちで降りていく人もいて9時、終点のオロンガポのバスターミナルに着く。オロンガポは、スービックがアメリカ海軍基地だったころは基地で栄えた町だったのだろう、狭い道に車と人があふれ賑やかだ。

 降りたとたんに「スービックへ行くのか」と声をかけられる。オートバイにサイドカーをつけたトライシクルの運転手なのだが、クラウンピークホテルまでいくらでいくかと何度も聞いてもNo problemでなかなか値段を言おうとしない。ねばって何度もたずねると「6」(600ペソ)というので、乗せてもらうことにする。

 オロンガポ市内はタクシーは見あたらず、トライシクルとジプニーという小さな乗り合いトラックがたくさん走っている。トライシクルではメインゲートより中のフリーポート区域には入れないので、入り口で別の運転手つきの車を雇いホテルへいく。
ジープニーとトライシクル
 ゲートの中は別世界のように静かで道も広々としている。外国企業の工業団地が建ち並ぶ中を通り過ぎて、奥にあるクラウンピークホテルへつく。このあたりは更に静かであちこちに植えられたブーゲンビリアやハイビスカスがリゾートの雰囲気を盛り上げている。

 フロントでチェックインカードを書いていると、荷物を運びがてら車を降りてきたトライシクルの運転手と英語は片言しか話さない夫がなにやらもめているようだ。途中で夫が私に話をバトンタッチしてきたところによると、入り口でエアコンつきの車を雇ったので1600ペソになるという。「そんなことはゲートでわかっていたはずなのになにもいわなかったじゃないか、私は乗る前にいくらだと何度も聞いたはずだ。あんたは600ペソだ。ノープロブレムと言ったではないか。」と英語で言い返すと、「だからあと400ペソでいい」というよくわからない論理で値下げした。「あんたが言ったとおり600ペソ払った」と言うと、「だからあと100ペソ足せ」というが、「払う必要はない」とねばると、「OK」と言って立ち去った。

 フリーポート区域の奥地とはいえ、オロンガポのバスターミナルからここまで10kmかそこらで、あとで調べたところによるとジプニーとフリーポート内を走るシャトルバスを乗り継げば14ペソなので、600ペソでも十分高いが、ジプニーは結構混んでいて大荷物を持って乗るのは大変そうだし、しょうがない。乗る前に交渉すればたぶんもっと安くなったと思うが、乗り物ごとに相場が違うようで、どのくらいが適切なのかよくわからず、結局マニラに帰ってからも、大して変わらない距離をタクシーに乗るたびに値段が違うという経験を何度もすることになる。

前のページへ次のページへ

コウモリ王国(フィリピン旅行)の目次へ

世界オオコウモリ紀行の目次へ