8 テンレックの夜

 夜7時、食事に行こうとすると、宿の入口の通路にテンレックがいる。マダガスカルから食料として移入された食虫類で、猫より一回り小さく、体は棘だらけ、鼻面がモグラのように尖っている。あわててカメラを取りに部屋に戻ったら、影も形もなく、かわりに猫がいた。どうやらこの猫が追い払ってしまったらしい。しかし食虫類っておいしいとは思えないし、ここセイシェルで食べた話はきいたことがないのだが、コモロやレユニオンやモーリシャスなどにも移入されているらしい。

 道の先にあるレストランまで行ってみたが、休みであった。戻ってきて宿の入口を再びのぞくと、かなりたくさんのテンレックが、落ち葉をかきわけながら歩き回っている。大小さまざまな大きさのものがいる。ライトをつけても全然気にしないが、フラッシュをたいたら、フリーズしたものと逃げるものが出た。

 車で「ラ・フォンテーヌ」というレストランに行く。ウェイトレスが手真似で空いている席を指して何か言った。聞き取れなかったので「?」と思ったのだが、そこの席に座れと言う事だと思って席についた。注文を取りに来たウェイトレスの言葉が再び全く聞き取れなかったのでびっくりして、Pardon?と聞き返したら、Something to drink?と今度は英語になった。どうやら最初はフランス語だったようだ。周りを見回すと観光客風の白人ばかりで、飛び交っているのはフランス語だけだが、どう考えてもフランス人に見えないわれわれにフランス語で話しかけてくるとは思わなかったので、びっくりした。しゃれた料理と、ドアも窓もない開放的なインテリアだが、込んでいるせいか料理がでてくるのは遅く、ウェイターは頼んでもなかなか勘定書を持ってこないし、今ひとつであった。椰子の芯のサラダ、ハンバーグみたいなオードブル、クレオール風チキンカレー、クレオール風グリル、インスタントの甘いコーヒー(げっ)、レモネードみたいにレモンの利いたアイスティーで計205ルピー。典型的な観光客向けレストラン。

 帰るとまたテンレックが2匹採餌していた。

飼育されているオオコウモリ オオコウモリが好きなら近くに飼っている人がいるよ、と教わって行ってみた。歩いて5分ほどの家の庭に檻があり、セイシェルオオコウモリが5頭いた。このときは庭が閉まっていたので外から眺めただけだったが、別の日にのぞいたときは、ちょうど家の人が門のあたりの掃除をしていたので、頼んで見せてもらった。掌くらいの、ごく小さな子どもを脇の下につけている個体がいる。生まれて1−2日かそこらだろうか。顔をしっかりお母さんの脇の下につっこんで見せてくれなかった。

 1月2日も、どしゃぶりの雨が降ったりやんだりであった。植物園に行ったり干潟の鳥を見たりして過ごす。街中のレストランはまだ開いてないので、この間とは別の中華料理のテイクアウトの店へ買い出しに行く。中国人かと思われて、中国語で話しかけられた。

 夜は宿の近くでテンレックとオオコウモリを観察。

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