緑島についた

 港には緑島旅社で絵に描いてもらったとおり、宿の主人が名前を書いた看板を持って迎えに来ていた。われわれの少し後に富岡港から出発した別の高速船もほぼ同時に着いたので、南寮港にはぎっしり人があふれていた。
 車に乗って南寮の村へ入る。すぐ後ろには山の斜面が迫る海岸沿いに民家が並ぶ、細長い村である。斜面には木が茂り、アマサギやアジサシの仲間がとまっていた。たどりついたのはレンタバイク屋を兼ねた小さな宿である。靴を抜いてスリッパに履き替えると、狭い中廊下の左右に部屋が並んでいて、人があふれかえっている。20代学生風の若者が多い。ユースホステルをせせこましくした感じといったらいいのだろうか。まだ新しいが、いかにもプレハブといった感じの建物である。われわれが入った二人部屋は、3畳ほどの大きさで、どういうわけか台形。鏡がひとつあるだけで、殺風景だが、蛍光灯が明るいせいか、暗い感じはしない。トイレ・シャワー・洗面所は共同で、なぜかその3点セットがひと部屋になっている。ユニットバスからバスタブを除いた物と思えばいい。だれかがシャワーを使った後は、びしょぬれのトイレになってしまう。人数の割に数も少ないので、順番待ちになってしまう。
 宿の主人は日本語はもちろん英語もダメなので、お客を片っ端から捕まえて通訳させる。日本語がほんの少しだけしゃべれる人と英語がちょっとだけしゃべれる人が来て「あと10分まってくれれば、オートバイで島を案内する。」という。われわれはオートバイは乗れないし、歩きたいのだというと、一周すると6時間かかるから、車で案内するという。やがてどやどやとみんなバイクに乗って出ていき、静かになった。
お昼を過ぎたので、近くの食堂の様子を見に行った。一軒のお店で中を覗いているわれわれに向かって、お店の人が注文票を振ってこれに書けばいいというようなジェスチャーをして見せている。しゃべれない日本人だとわかったのだろうか。なんだかわからない黒くて歯ごたえのあるもの(ナマコかな?)と葉っぱとトウガラシ、ショウガ、ニンニクのぶつ切りがたっぷり入った炒め物、沖縄にもあるカツオブシのたっぷり入った丼入りのアーサ汁、切麺というのは肉のそぼろが入った平べったいうどん風の麺だった。ねぎ入りの卵焼きはカニ玉からカニを抜いたようなもの。計115元
 2時になったら車で島内を案内してくれると言っていたのだが、2時過ぎに玄関ロビーに行くと、ご主人は男性一人女性二人の若いグループと話し込んでおり、いそがしいからタクシーだと一周二時間800元だが良いかと、英語で通訳させた。タクシーを呼びにいくのか、主人はどこかへ出かけていった。
 残ったお客の中の男性がお茶を入れてくれる。急須、茶海、茶さじに出がらしの葉っぱを取り除くトング、急須や湯飲みを暖める茶盤、お湯を捨てる鉢などの茶道具が並んでいる。葉を急須に入れて、やかんのお湯を沸騰させて注ぎ、二口くらいの小さなお茶碗に頻繁につぐ。まるでおままごとのようだ。頻繁にお湯を沸かしては、これを繰り返す。

 片言の英語でおしゃべりをしながら、お茶を飲んで過ごした。

 

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