台東の夜

 台東の町を探検しに行く。まず明日は朝から船に乗るので、ホテルの近くの薬局で酔い止めを買う。中国語会話の本を調べて「船」と「酔う」に当たる単語を書いて見せたら、お店のおばさんは日本語が通じて、「船に乗るの。」と言われた。ドリンク剤と錠剤が二人分二回だから4セットで、250元はちょっと高く感じた。おまけにドリンク剤はガラス瓶だから重い。

 正気路というところにフルーツ市場がある。果物屋さんばかりが軒を並べさまざまなトロピカルフルーツが並んでいる。トマトも果物らしいく一緒に並んでいる。サトウキビ屋というのもあって、葉を落として竹のようにも見えるサトウキビがたくさん店内に並んでいる。火龍菓という見たことのない濃いピンク色の果物を買った。ホテルに帰ってナイフを入れると中は白くてゴマのような種がある。水っぽくてかすかに酸味があり、品種改良していない素朴な味である。ちなみに同じ物を日本のデパートで見かけたが、メキシコ産で一つ1000円であった。魚市場や野菜市場屋台風の食堂街もある。

 市場周辺では数軒おきにビンロウ屋を見る。ミクロネシアではビンロウを噛む習慣があるはずで、お店で売っているのはけっこう見かけるのだが、噛んでいる人はあまり見ない。上品な嗜好ではないとみなされているようだ。しかしここ台東の街ではほんとうにあちこちにビンロウ屋があり、店先にはバケツに山ほど入ったビンロウを削り、葉に包んでビニール袋につつんで売っている。
 歩道にテーブルを出したお店で夕食を食べる。虱目魚肚湯というのは字を見るとちょっと遠慮したい料理だが、確かこの魚は台湾南部の名物だったはずなので注文してみた。あっさりした白身の魚スープである。50元。ロタでミルクフィッシュを食べたが、実は同じ魚だと後ほど聞いた。その他にご飯に皮付きバラ肉を載せたもの25元、ご飯にブタのそぼろ肉をかけたもの20元をたのむ。その後もこういった簡易食堂では陶器の食器を見ることはほとんどなく、スープもご飯も発泡スチロールの丼などに盛ってあり、ビニール袋入りの割り箸を使って食べる。大量のゴミがでるが、食器を洗う手間は省けるし、まあこの方が衛生上いいのかも。

 もの足りないので、ファーストフード風のお店で包子類を筆談で注文してみるがどれもないという。近くの屋台をのぞくと、4枚切りくらいの厚い食パンに卵汁をつけて中華鍋で焼き付け、ハサミで器用に上面を蓋のように切り抜いてキャベツの千切り、サウザンアイランドドレッシング、肉類の煮込みをいれてサンドイッチにして売っている。先ほどの何も商品がなかったファーストフード店のお姉さんがこちらの屋台へ来て食パンを持ち上げて「パンですよ」という感じで見せる。南部の食べ物に棺材板というのがあるが、その変形版らしい。メニューの羊肉を指さして注文した。

 セブンイレブンなどのコンビニエンスストアも何軒か見かけた。おにぎりがあった他は日本のセブンイレブンと共通する商品は見あたらない。卵を八角としょうゆで煮たものがあって店中に匂いが立ちこめている。黒松沙士という缶入りの飲み物を買う。沖縄でよく見かけるルートビアに似た薬草ぽい味がする。この手の味は嫌う人が多いけど、私は好きである。

 一日中雨が降ったりやんだり。トタン屋根の家が多いので雨の音が大きく響く。 

  

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