ロタの植物

 南マリアナの島々は、4200万年ほど前の始新世の火山活動によってできたといわれている。玄武岩や安山岩が風化した火山性の土と、リーフが隆起してできた石灰岩からなっている。年間の気温の変動は少なく、乾季と雨季に分かれてはいるが、乾季にも降雨がある。
 このような島の生い立ちや気象条件、そして大陸から離れているという地理的条件によるマリアナのもともとの植生は、大型の葉を持った常緑広葉樹の林が優占し、ホルトノキ科、クワ科、センダン科、マメ科、ヤシ科、タコノキ科などが主になっている。
 現在は、人によって持ち込まれた植物がたくさんある。古代、人間が移住してきたときに食物として持ち込んだものや、また近年は、ココヤシ、カカオなどのプランテーションや、日本の統治時代にはサトウキビ畑が作られている。台風の影響の大きいこの島は、サトウキビ栽培には適しておらず、現在は栽培していないが、その名残と思われる野生化したサトウキビをあちこちで見かける。この時代に急斜面や水源地以外はほとんどが耕されたらしく、また、第二次世界大戦では爆撃などによってだいぶ自然は荒廃したものと思われる。戦後グアムやサイパンには米軍によってギンネムの種が蒔かれたが、ロタでもギンネムがたくさん見られるのはこのころ持ち込まれたのだろう。
 したがって、二次林と思われるものがほとんどで、もともとの森林がのこっている場所は非常に少ない。崖のような急斜面だけだろうが、そのような場所でさえ、南海岸の一部では、ほとんど植生の無くなってしまっている場所がある。


マリアナパンノキ 高さ15m以上になる大木で、いたるところにある。4月から10月頃にかけて実をつけるというが、木によって時期がずれ、実際は一年中見ることができる。ソフトボールくらいの大きさの実をたくさんつける。もともとチャモロ人の主食の1つなのだが、生の実をお店で売っているのを見かけることはないし、調理したものもレストランでは見たことはない。あまりにもありふれたものなので、商品として販売するのは気が引けるのかもしれない。パンの実チップスとしてお菓子に加工され、販売されているのは見かける。 熟すと黄色になり、この状態の時はオオコウモリが食べる。人間が加工して食べるのは緑色の段階の時である。熟して落ちた実はねっとりしてアルコ−ル発酵をしたような匂いがする。赤茶色のショウジョウバエがたくさん群がり、オカヤドカリも集まる。他に細長い実がつくことがあって、これはスポンジのように中がスカスカで軽い。時々大きな葉っぱがバサッと音を立てて落ちてくるので、そのたびに何か動物がいるのかと思って振り向くことになる。

ギンネム
 グアムやサイパンでは第二次世界大戦で山が裸になったところに米軍が緑化・土止め用として種を蒔いたという。ロタのもそうかもしれない。明るいところを好む木なので、道路沿いでよく見かける。熱帯アメリカ原産のマメ科の低木で、枝先に白い丸い花をつけ、黒褐色の莢ができる。日本でも小笠原や沖縄でよく見かける。

モモタマナ
 別名コバテイシ。街路樹や庭木としても栽培されている落葉の大木で8−12mになる。熱帯樹にはめずらしく紅葉する。長さ5cmほどのラグビーボール型の実の中には、大きな種が1つ入っていて、アーモンドの香りがして食べられるそうだ。英名はTropical almondである。 沖縄ではオオコウモリが好んで食べていたが、ロタではまだ食べた痕跡を見たことがない。オオコウモリが食べるのは、外側の果肉部分である。2月に行ったときは青い実がなっていた。 なおアスマンモスの崖やポーニャ岬には近縁のT. littolalis が分布しているという記録がある。この種は海からの風を受ける台地に地をはうように分布する匍匐性植物である。(グアム・ロタ島植物調査報告書1979)

ガジュマルの仲間
 同じく沖縄ではオオコウモリが好んで実を食べる。7月にわずかだが熟した実を食べた跡があった。

ココヤシ
 日本の統治時代はコプラをとるためにたくさん植えられたという。1800年代の終りのドイツ領の時代にもかなり植えられていたようだ。近年は観光のための景観植物としてあちこちに植えられている。また落ちた実が自然に発芽したと思われるものもある。 ヤシの殻の芽が出るところに三つの穴が開いていて、それを正面から見るとサルの顔のように見える。それでスペイン人はサルという意味のココと名付けたという。青いココナツの中にはちょっと青臭くうす甘い汁がコップに三杯くらい入っている。ココナツがだんだん熟してくるとこの水分は実に吸収されて減っていく。そのまわりの胚乳は真っ白でこりこりした感じになる。さらにココナツの実が茶色くなってくると胚乳はますます厚くなって、これをはがしたものをコプラという。乾燥してヤシ油を採り、マーガリンやお菓子、石鹸の材料などになる。また、ヤシの実自体を加工しておみやげ品にしている。 ヤシの仲間は、何種類か見られる。巨大なドングリのような実をつけているものもあった。

タコノキの仲間
 長い剣状の葉をつけ、パイナップルのように小果が密集した丸い果実をつける常緑性の中高木。幹の基部からタコの足状に根を出すので、この仲間をタコノキという。タコノキ属(Pandanus)にはいろいろな種類があり、栽培品もあるらしい。沖縄にあるアダンもこの仲間である。グアム・ロタ島植物調査報告書(1979)によれば、ロタ島のタコノキ属には三種あり、Pandanus fragrans は実が熟すとパイナップルのような甘い香りを放つ果肉をつけ、オオコウモリやネズミの餌となったりショウジョウバエが集まる。またもうちょっと繊維っぽい実を付けるPandanus dubius は完熟すると小核果に分離し、それを包丁で縦に二つ割りにすると小型のアーモンドくらいの白色の胚乳が出てくる。食べるとナッツのような味がする。もう一種類、現地でアガックと呼ばれるアダンがあるが、これは実をつけない。 

モクマオウ
 島のあちこちに見られる高木。松の葉を長くしたような針状の葉をつける。1−2cmの小さな松ぼっくり状の実をつける。モチョンビーチでは海岸の防風林として植えられている。

ジョガ
タイサカンなど山の中に見られる大木。オオコウモリがこの実を好むという。日本のホルトノキに近い木である。

パパイヤ
栽培もしているが、道ばたの明るいところなどであちこちに野生化している。野生化したものは実が小さく10cmくらいである。

ハスノハギリ
海岸によく見られる20mほどの木。4−5cmの肉厚の白い苞に包まれた実が鈴なりになっているのを見る。苞には先端に穴があり黒褐色の核果が見える。英名のChinese-lantern treeというのがぴったりである。

ハユランゴ(右の写真)
 ロタとグアムに固有の植物で合衆国の絶滅危惧種に指定されている。ロタには121本、グアムには1本しかないらしい。英名はFire tree。タイサカンの一番奥の展望所のすぐ下に一本ある。7月下旬にはピンクのネムノキに似た花が咲き美しかった。マリアナミツスイが蜜を吸いに来ていた。
火炎樹またはホウオウボク 英名をFlame of the Forestといい、夏に燃えるような真っ赤な花をつける落葉性高木。マメ科らしく羽状複葉で長い莢ができる。原産はマダガスカル島と聞いたが、ソンソン村のあちこちに植えられている。
ランタナ 常緑性の小低木で茎頂に黄橙色の小花を密集して咲かせる。周年開花する。熱帯アメリカ原産で栽培植物としてよく見かけるが、それがあちこちに広がったようだ。蝶がよく集まっている。

オオハマボウ
海岸によく見られる木で黄色い花が咲く。集落にも植えられている。

マリアナクチナシモドキ
 石灰岩の崖に生える南マリアナ諸島固有の種。サンクチュアリの崖などに見られる。朝顔のような白い花をつける。

シマオオタニワタリ
ロタではたくさんのシダが見られるが、あいにくわれわれは苦手で識別が出来ない。このオオタニワタリは日本にもあるが、ロタでも樹木に着生して丸く大きく育っているのをよく見かける。上に落ち葉がつもり雨水がたまって腐植土ができるのだ。地面や岩の上などにも見かける。この仲間は日本で観賞用に鉢植えになっているが、ここでもフィエスタの飾りに使われていた。ハマヒルガオの仲間 海岸にハマヒルガオの仲間が白い花を咲かせ、つるをはわせている。

オイ(右の写真)
 日本にクマツヅラという植物があるが、同じクマツヅラ科であり、よく似ている。熱帯アメリカ原産の多年草。茎は1m以上になり、枝分かれしてのびる。細長い花穂を出して紫色の小花を下から2−3輪ずつ咲かせていく。いたるところで野生化していて道ばたではいちばんよく見かける。
クサトケイソウ 南米原産のトケイソウの一種。 太平洋諸島や沖縄でも移入している。特にわれわれが日本でオオコウモリを見によく訪れた南大東島では多いので、なじみの深い植物である。朝顔に似た形の葉をつけ、つるは地面をはう。とげだらけの苞が花や実を包んでいるのが特徴で、花はトケイソウより小さく淡い紫桃色。花が終わった後は縦縞の小さな緑色のミニチュアのスイカのような球果をつける。海岸の近くでよく見かける。

ニガウリの実野生のニガウリ
実が熟してオレンジ色になるとパックリそっくり返り、赤い種が見える。日本では沖縄や九州で栽培して料理に使うが、この島で料理に入っているのを見たことはない。
その他道ばたのコセンダングサやフウセンカズラクワズイモなど沖縄の道ばたにある植物と似ている。イネ科の牧草が野生化したもの、ベニバナボロギクなども道の脇でよく見かける。

ハイビスカス いかにも南国のイメージの花である。村落内や道路際などあちこちに植えられている。一年中開花している。

プルメリア 西インド諸島原産の中高木。白くて芯が黄色い花を咲かせ、香りがよいのでホテルなどに植えられて、部屋に一輪メイドが挿していったりする。

タロイモ (右の画像はおみやげのタロイモ)チャモロ人の主食で、サバナ高原などで栽培されている。ロタでとれる作物のうちこのタロイモとキュウリはかろうじて島外に出荷して商売になっているようだ。とくにタロイモはチャモロ人の主食ということでグアムにも検疫なしで持ち出せるようだ。10月や11月に行ったときは空港の前や道ばたで里芋の親分のようなこのタロイモを出店をして売っていた。もともとはハワイやフィジー原産だそうだ。葉は里芋によく似ている。湿地性植物なので雨の多いサバナ高原が合っているのだろう。品種はいろいろあるようだ。売店にもハワイのタロイモとロタのタロイモと両方売っていた。
サバナ高原には野生のランがよく見られる。ピンク色をしたのは次の二種類である。

コウトウシランコウトウシラン ほとんど一年中咲いている。シランのような笹葉で草丈50−60cm。花茎は150cmにもなることがある。茎上に紫紅色の直径2−3cmの花を短穂状に咲かせる。花が終わった後細長いカプセル状の莢ができて垂れ下がり、小さな種が何千個も含まれる。日当たりのいい道路際などによく見かける。
Spathoglottis carolinensis Spathoglottis carolinensis  ロタの日当たりのいい草地やシダの中に生えている。花びらとがくは青みがかった青紫色。コウトウシランに似ているが花がもっと大きく直立している。この2種が同じ場所にまざっていることもあるが、種のカプセルがあまりできないことで区別がつく。舌はハート型になる。
ツルラン 葉はシランのような笹葉で花茎はまっすぐ1mほどのび白い小さな花をたくさんつける。タイサカンの観察路でよく見かけた。日陰の水はけのいいところを好むようだ。

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